気乾比重とは?木材選びのポイントも解説
気乾比重とは、ある体積の木材を自然乾燥させたときの重さと、同体積の水の重さの比率です。
樹種ごとに気乾比重は異なり、数値が高い木材は硬くて強度があり、数値が低い木材は柔らかく加工しやすいといった特徴があります。
DIYなど家具作りで一枚板を購入する場合は、木目や見た目の美しさだけでなく、気乾比重も考慮すると長く使える素材を選びやすいです。
本記事では、気乾比重の基本や樹種ごとの特徴、用途の違いを分かりやすく解説します。
この記事でわかること
気乾比重とは?
気乾比重は、木材の重さを表す指標です。具体的には、気乾状態にある無垢材(天然の木)と同体積の水の重さの比率で表します。
例えば1立方センチメートルの木材の重さが0.6gの場合、同体積の水は1gなので、気乾比重は0.6 ÷ 1 = 0.6です。
気乾比重が1を超える木材は水に沈み、1未満の木材は浮きます(実際には木材の内部に空気が含まれるため、1を少し超えても浮くことがあります)。
多くの樹種の気乾比重は1未満であり、1を超えるものはリグナムバイタなどごく僅かです。
気乾比重が高い木材と低い木材、どちらが一概に優れているとはいえず、双方に異なる使い道があります。
気乾状態とは?
気乾状態とは、木材やコンクリートなどの材料の含水率と周囲の湿度のバランスが取れ、材料内の水分が大きく増えたり減ったりしない状態です。
木材の気乾状態の含水率は15%程度です。気乾状態になると、一枚板に割れや反りが発生しづらくなります。
気乾状態にある木材が気乾材であり、建築や家具の製作に使われます。
なお、含水率とは木材の重さに対する水の重さの割合です。
例えば1000gの木材が200gの水を含んでいる場合、含水率は200 ÷ 1000 = 20%です。
水を多く含む樹種では、伐採直後の含水率が100%を超えることもあります。一枚板の気乾比重から、含水率を計測可能です。
気乾材をさらに乾燥させると含水率がほぼ0%の全乾状態になります。その際の重さが全乾比重です。
一度全乾状態にしても、自然状態の中で放置すれば気乾状態と同等の含水率まで戻るため、全乾状態にした木材の用途は多くありません。
気乾比重は何に使われる?
気乾比重は主に、木材の強度の指標に使われます。強度とは変形や破壊への耐性で、一般的に、気乾比重が高い(重い)木材は強度が高いです。
例えばナラやケヤキなどは気乾比重の高い木材の代表例であり、耐久性が求められる用途に使われます。
一方、気乾比重が低い(軽い)木材は強度に劣る反面、柔らかく施工が簡単なため、壁や天井の内装材、あるいはデザインが重視されるインテリアの材料などに使われます。気乾比重が低い木材はスギやヒノキなどです。
気乾比重の目安と分類
気乾比重の基準の目安は0.6で、それ以上のものは高比重材、それ未満の物は低比重材と呼ばれます。
一枚板を購入する際は、用途に適した気乾比重のものを選ぶと良いでしょう。
高比重材と低比重材の特徴は以下の通りです。
高比重材 | 低比重材 | |
---|---|---|
空気層 | 少ない | 多い |
耐久性 | 高い | 低い |
施工性 | 施工しづらい | 施工しやすい |
調湿性 | 低い | 高い |
硬さ | 硬い | 柔らかい |
主な用途 | 構造材、テーブル、 棚など |
壁や天井の内装材、 タンスなど |
【樹種別】気乾比重一覧と特徴
ここでは、主な樹種の気乾比重と特徴、用途を紹介します。一枚板の購入をご検討中の方はぜひ参考にしてください。
- バルサ(気乾比重0.27):
木材の中でも特に軽く柔らかい。軽さの割には強度に優れ、建築資材や模型材料として人気がある。 - キリ(気乾比重0.29):
バルサほどではないが軽量で、デザインが重要な家具や楽器などに使われる。内部に空洞が多く、吸水性が高い。傷つきやすいため慎重な取り扱いが必要。 - スギ(気乾比重0.38):
日本で古くから利用されてきた歴史ある樹種。入手難易度が低く、比較的軽量で扱いやすい。建材から内装材まで、幅広い用途に使われる。 - ヒノキ(気乾比重0.41):
日本固有の高級樹種。比較的軽量で加工しやすく、その割に強度が高い。見た目が滑らかで美しく、独特の芳香成分であるヒノキチオールを含み香りが良い。 - ヒバ(気乾比重0.41):
別名アスナロとも呼ばれる高級樹種。ヒノキ以上にヒノキチオールを豊富に含み、防湿性、防腐性に優れる。成長が極めて遅く、入手コストは高い。 - マホガニー(気乾比重0.51):
世界三大銘木の一つ。加工性に優れており、高級感のある見た目から楽器などにも使われる。ワシントン条約で国際取引が制限された希少種で、価格は高い。 - ケヤキ(気乾比重0.62):
日本を含む東アジアに広く分布する広葉樹の一種。木目が美しく、芳醇で華やかな香りを放つ。木目や色味の個体差が大きいためさまざまな用途に適しているが、加工性はあまり良くない - ウォルナット(気乾比重0.63):
世界三大銘木の一つ。米国やカナダに分布し、濃い褐色から黒褐色で、美しい木目が特徴。耐久性があり、衝撃に強く加工しやすい。 - ブナ(気乾比重0.63):
北海道から九州まで日本に広く分布する。強度が極めて高く、さらには曲げにも強いため建材などに使われる。ただし硬いため加工は難しい。 - ナラ(気乾比重0.67):
日本国内に広く分布しており、特に北海道の良質なナラは「ジャパニーズオーク」と呼ばれ世界的に人気がある。耐久性や耐水性に優れ、水回りの用途に適している。 - ハードメープル(気乾比重0.71):
カナダや北米に分布する樹種。心材は淡赤褐色で、緻密な木目が特徴。硬く加工しづらいが衝撃や摩擦に強い。 - コクタン(気乾比重0.98):
樹高や直径は大きくないが、重硬で耐久性に優れる。年輪は不明瞭で加工難易度は高いが、その分丈夫な製品を作るのに適している。 - リグナムバイタ(気乾比重1.24):
市場に流通している木材の中では特に気乾比重が高く、強度も高い。乾燥に時間がかかる上に加工難易度も高く、主に小物に使用される。
※参考:一般財団法人 日本木材総合情報センター.「木材の種類と特性」.https://www.jawic.or.jp/woods/sch.php ,(参照2025-09-19).
気乾比重で異なる木材の用途
気乾比重が高い木材と低い木材は通常、以下のように使い分けます。
高比重材が向いているケース
気乾比重が高い木材は硬くて丈夫なため、荷重がかかりやすい場所に使われることが多いです。
例えばフローリング材には、ウォルナット(気乾比重0.63)やハードメープル(気乾比重0.71)などの高比重材が使われることが多いです。
ただし、修復のしやすさや肌触りを優先し、あえて低比重材が使われるケースもあります。
また、階段やドア、引き戸などには、反りや歪みに強く硬い高比重材が適しています。さらに、キッチンカウンターやダイニングテーブルなどの家具にもよく用いられ、高級感と頑丈さを両立可能です。
※参考:一般財団法人 日本木材総合情報センター.「木材の種類と特性」.https://www.jawic.or.jp/woods/sch.php ,(参照2025-09-19).
低比重材が向いているケース
低比重材は強度に劣る反面、軽くて加工しやすいため、主に荷重がかかりにくい内装材や模型、工芸品や工作キットなどに使われます。
例えば天井や壁などの内装は、高級感を出すために高比重材を使うこともありますが、施工難易度を抑え、建物全体の重量を軽減するために低比重材を使うことも少なくありません。
最も軽いとされるバルサ(気乾比重0.27)は、バードカービング(野鳥の彫刻)や模型、あるいは木箱などに使われます。
一方で、スギ(気乾比重0.38)やヒノキ(気乾比重0.41)は低比重材でありながら木造建築などに使われます。
スギは単純な強度は高比重材に劣るものの、住宅に使うには十分な強度があり、安価で加工しやすい上、湿気やシロアリにも強いです。
※参考:一般財団法人 日本木材総合情報センター.「木材の種類と特性」.https://www.jawic.or.jp/woods/sch.php ,(参照2025-09-19).
まとめ
気乾比重は、気乾状態(材料の含水率と周囲の湿度が均衡した状態)での木材の重さを表す指標です。含水率がほぼ0%の木材の重さは、全乾比重といいます。
気乾比重によって木材の強度や加工性が分かります。
基本的には、気乾比重が高い木材は強度が高く、耐久性や高級感が求められる用途に使われ、気乾比重が低い木材は加工性に優れ、内装材や模型などに使われることが多いです。目的に応じて木材を選ぶ際は、気乾比重も参考にするとよいでしょう。
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